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2015年08月11日

著書「一日本人としての私のねがい」より・・・・松下幸之助

著書「一日本人としての私のねがい」より

私は、こういうことは言いたくありませんが、戦後世界で数十カ国というものが植民地から解放されまして、独立をしました。

むろん植民地から自主独立の国家になりましても、そこには国家経営のうえに非常にむつかしい問題もあり、独立が直ちに幸福に結びつくとは考えられません。

それはそれで非常な苦難があると思います。

しかし、いかに苦難がありましても、独立国家として再出発することができるということは、なんといいましてもその国にとって大きなしあわせであると私は思うのです。

その大きなしあわせはどうして生まれたかといいますと、一つにはあの太平洋戦争の結果だとも考えられます。

日本としてはあやまちであったかもしれない、聖徳太子の和の精神に反することであったかもしれないが、四年にわたって日本が太平洋戦争を戦い抜いたことが、これらの国々に解放をもたらし、大きなしあわせをもたらす一つの基礎になっていると私は思うのです。

こんどの戦争で、若き青年あるいは学徒動員された人たちは、一路殉国の精神に燃えて、あるいは特攻隊員になって戦死された。

そういう殉国の青年をして犬死というような人があるとするならば、これは私は許せないことだと思います。

それらの若き青年の死はけっして犬死ではなかった。

そういう青年たちの尊い血が流されたということが、アジアなりアフリカの幾多の植民地の国々が独立した一つの基礎になったということを考えますと、その独立は、一面において日本の若き学徒なり青年なりによってもたらされたということが言えると思うのです。

しかし、そのことがわれわれ国民のあいだで叫ばれておりますかどうか。

おおかたは叫ばれておりません。

のみならず、独立をかちとった国の人びとも、はっきりとそういうことは言っておられません。

これは私は、日本が4年間戦い抜いたことによって、そういう機会が生まれたということを、はっきり知ってもらうべきではないかと思うのです。

もし日本に実力がなくして、戦争が一夜にして敗北する、あるいは短期間にして敗戦の憂き目をみるというようなことがあったならば、植民地は解放されなかっただろうと思うのです。

松下幸之助(日本、実業家)