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2016年09月01日

個人型確定拠出年金 公務員や専業主婦に対象拡大 メリットは税優遇 デメリット、運用リスク

個人型確定拠出年金
公務員や専業主婦に対象拡大 メリットは税優遇 デメリット、運用リスク
毎日新聞2016年8月31日 東京朝刊
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個人型確定拠出年金の対象拡大が決まり、各金融機関は詳しいパンフレットを作って加入者の呼び込みを図っている
 私的年金の一つ「確定拠出年金制度」の拡充を図る法律が先の通常国会で成立した。現在は自営業者など加入対象が限定されているが、来年1月から原則としてすべての現役世代が加入できるようになる。税制優遇が大きなメリットだが、加入者自身が金融機関と商品を選んで運用しなければならず、リスクを負うこともある。【有田浩子】

 公的年金制度には全国民共通の基礎年金(国民年金)と、サラリーマンや公務員などが加入する厚生年金がある。私的年金はこれに上乗せする年金で、自営業者らが自主的に入る国民年金基金や、企業ごとに運営する確定給付企業年金、企業や個人が掛け金を積み立てる確定拠出年金などがある=表参照。
 確定拠出年金は2001年に、米国の内国歳入法401条k項に基づく年金制度をモデルにつくられ、「日本版401k」とも呼ばれる。納めた保険料に応じた年金を受け取る公的年金と異なり、掛け金を運用し、将来の年金額が決まる。企業が掛け金を出す「企業型」と個人で加入する「個人型」がある。企業型も運用は従業員個人が行う。
 企業型の加入者は比較的規模の大きい会社を中心に約505万人いるのに対し、個人型はこれまで自営業者や企業年金のない会社員に限られていたこともあって約21万人にとどまっている。来年1月から「個人型」に公務員や専業主婦、すでに企業年金に入っている人などが加わる。約2600万人対象者が増えるとされる。
 加入者は、銀行や証券会社などを選び、そこの運営管理機関が提示する商品の中から選ぶ。金融機関によって提示する商品の種類や数は異なるが、平均20本程度が示される。
 リスクや収益性の異なる商品がさまざまあるが、(1)定期預金や保険商品など、満期まで加入すれば元本と利息が受け取れる元本保証型と、(2)国内外の債券や株式など、リスクもあれば運用益も大きい、元本保証型以外−−の二つに大別できる。商品の種類を変更したり、リスク分散のために複数の商品を組み合わせて運用したりできる。原則として60歳になるまで中途脱退は認められず、加入期間によって受け取れる年齢が決まる。
 最大のメリットは税制優遇だ。毎月の掛け金は全額所得控除されるため、2万円ずつ掛け金を出した場合、所得税率が20%(課税所得330万〜695万円)、住民税率10%とすると年間7万2000円の節税となる。また、運用益は非課税で、受け取る際にも税制優遇措置がある。ただし、加入時の手数料や毎年数千円の口座管理費など各種手数料がある。
 掛け金には上限があり、個人型は最大年額81万6000円(月額6万8000円)。企業型では年額66万円(月額5万5000円)までで、企業型に加入したうえで個人型を始める場合も限度額がそれぞれ決まっている。
 今回の改正では、対象者の拡大のほか、18年1月からは掛け金をボーナス時にまとめて払うこともできるようになる。また、中小企業が企業型に加入しやすいよう、加入手続きを簡素化した簡易型の創設や、100人未満の小規模な企業で個人型に加入している社員に、企業が掛け金を追加できるようにすることなども検討されており、18年6月までに実施される。
公的年金縮小 自助努力促す
 政府が確定拠出年金を拡充するのは、公的年金の給付水準の低下が見込まれるからだ。今後30年間で厚生年金は2割、国民年金は3割下がる見通し。私的年金加入という「自助努力」によって老後の資金確保を促す狙いがある。
 公的年金の財政状況は5年ごとに検証し、年金の給付水準見通しが現役世代の手取り収入との比較で示されている。
 2014年度の財政検証によると、現在の厚生年金の水準は現役世代の収入の62・7%だが、43年度には50・6%まで低下するとしており、30年で2割目減りする計算だ。
 給付水準が下がるのは、少子化によって保険料を負担する現役世代の数が長期にわたって減っていくためだ。確定拠出年金制度の拡充は、現役時代から将来に備えるための方策の一つといえる。
 一方、政府は、将来の年金支給水準の目減りを抑えるため、現在の年金支給額の伸びを抑える法案を提出しており、秋の臨時国会での成立を目指す。また、10月には、年金の受取額を増やすため厚生年金の加入対象者の拡大も実施する。週20時間以上、従業員501人以上の企業で働き月収8万8000円以上(年収105万円以上)の約25万人の新規加入を見込む。さらなる対象拡大や、国民年金の保険料を納める期間の延長も検討する方針だ。
 日本年金機構の示すモデル世帯(夫が厚生年金に40年間、妻が専業主婦で国民年金40年間加入)では、受取額は14年11月現在、月22万6000円。実際の受取額はそれより低く、国民年金だけだと、1人当たり平均5万円台にとどまる。

http://mainichi.jp/articles/20160831/ddm/016/010/002000c