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2016年09月01日

どうする放課後 学童保育の今/上 利用者急増、施設追いつかず

どうする放課後
学童保育の今/上 利用者急増、施設追いつかず
毎日新聞2016年8月31日 東京朝刊
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 小学生が放課後を過ごす学童保育で、入所を待つ待機児童は昨年1万5533人に達して初めて1万人を突破(全国学童保育連絡協議会調べ)した。すし詰め状態のクラブもあり、自治体は場所の確保に四苦八苦している。

 ●200人が集まり
 小さな机の周りに真剣な表情の女子児童が集まっている。周囲がさわがしいのも気にならない様子で、黙々とミサンガを編む。8月初旬、大津市の瀬田児童クラブ。「狭くなるとけんかも増えるので、工作に集中できるコーナーなどを作り、居場所を分散する工夫をします」。代表指導員の古家孝子さん(60)が説明してくれた。
 一部増築した2階建ての建物と、隣接する市立瀬田小の空き教室を200人近くの子どもたちが使う。人口34万人の大津市で宅地の開発が進む瀬田地域。普段はパンパンで熱気が渦巻くが、この日は1、2年生が市民会館の映画鑑賞に出かけているので、すいているほうだという。小学4年の女児は「去年から(留守番に)慣れたから、夏休みだけ来てるの。人生ゲームで遊ぶのが好き」と話した。
 大津市は公設公営を基本に、15年前から障害のある子も含め6年生まで受け入れている。待機児童は出さない方針だ。子どもは、下校時間が早い低学年のうちは年間通して利用し、高学年になり、塾や習い事で児童クラブに来ない日が増えると、夏休みだけ登録する子が多い。空き教室や自治会館など期間限定の場所を用い、夏休み中の子どもを別の場所で受け入れることで、待機児童を出さずに済んでいる。
 ●共働き増加と共に
 市の児童クラブ課によると、児童数は6年前の2万754人から1万9349人へ減り続けてきたが、児童クラブ入所は増える一方で、2006年の2297人に対し今年度2983人。他谷秀樹課長は「3年前から保育所の整備が進み、下の子を預けて共働きできるなら上の子も学童に、と考える家庭が増えたのではないか」と見る。
 夏休み入所は7、8年前から広報してきたが、11年度から3年続けて100人単位で増加。15年度からおやつなし、午後3時終了として伸びが収まったものの、今年は970人が利用した。
 瀬田児童クラブの子どもたちは主に、小学校の空き教室で過ごす。「夏休み入所は時間が短く、水遊びなど夏らしい活動もしにくい。でも、ここはまだ建物に恵まれています」と古家さん。夏だけ自治会館などを借りるところもある。「夜間に別の団体が使うため、日にちをかけて作る大きな工作に取り組めなかったり、仕切りのない広い場所に大勢でいて疲れたりする子もいる。新施設を造ることも考えてほしい。児童数が減った将来は高齢者向けに転用すればいい」(元指導員の女性)との声もある。
 ●整備する財源なく
 自治体向けに国が昨年定めた放課後児童クラブ運営指針は、子ども1人当たりの面積を「おおむね1・65平方メートル以上」としている。しかし、十分な広さのある新施設を整備する財源はない。他谷さんは「指導員も時給アップしてなんとか確保している状態で、(施設までは)難しい。月額1万円の保育料を値上げすれば保護者が利用をあきらめカギっ子になりかねない」と悩む。社会福祉法人や企業など民間が運営するクラブも7カ所あるが、今の補助金の水準は収支がトントンなので、増えそうにない。
 人口39万人の大阪府豊中市も施設不足に悩んでいる。
 市役所に近い住宅街の市立南桜塚小学校で空き教室を利用した「つくし学級」。二つ半分の教室のスペースで、1〜4年生145人と指導員11人が過ごす。「理想は子ども40人。4月は顔と名前を覚えるのに必死です」と指導員の南みちるさん(53)。おやつ時には、一面に広げたテーブルとともに子どもたちの足も並び、踏んだ踏まれたのトラブルも度々だ。
 ●「あふれてしまう」
 昨年政府が施行した子ども・子育て支援新制度で、学童保育の対象の上限は3年生から6年生へ引き上げられた。豊中市は以前から障害や医療的ケアの必要な子は6年まで受け入れてきたが、さらなる拡大は難しくなってきた。
 市こども事業課の今井小百合主幹は「国は公立小の空き教室利用を想定しているけれど、児童数の増えた学校は学童クラブの利用も増え、空き教室は足りない。施設の確保に十分な財源もなく、あふれる子どもが出てしまいます」と話す。6年生まで受け入れを広げる自治体も少なくないが、豊中市は4年生までに限定し、「様子を見ている」という。
      ◇
 子育て支援や女性活躍を掲げる政府は、子ども・子育て支援新制度で、市町村が計画的な整備を進めるとした。共働き世帯の増加に加え、保育所の増設でさらなる不足も予想され、各地で児童クラブの整備の遅れが指摘されている。子どもたちの居場所はどう変わるのか、探った。

学童保育
 共働き家庭などの小学生に放課後や学校の長期休業期間中、遊びや生活の場を提供する。放課後児童クラブともいう。保護者らが自主的に運営する形で広まったが児童福祉法改正で1998年に制度化、厚生労働省の事業として市町村が整備するようになった。
 全国学童保育連絡協議会の昨年5月の調査では2万5541カ所で行われ利用する児童数は101万7429人。2014年に打ち出した放課後子ども総合プランでは19年度末までに約30万人分の新たな受け皿を整備することを目標にしている。市町村は国の省令基準を参考に面積、定員などの基準を条例で定める。研修を受けた放課後児童支援員の配置も義務づけられた。

http://mainichi.jp/articles/20160831/ddm/013/100/025000c