「虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願いも尽きん」・・・『性霊集』巻第八　　

弘法大師は832年（天長9年）8月22日、高野山金剛峰寺において、もろもろの弟子とともに万灯万華会（まんどうまんげえ）をおこなった。万の灯明と万の花とを両部曼荼羅に供養する法会である。

このとき、弘法大師はこの法会を今後毎年おこない、あらゆるものの恩の恵みに奉答することを宣言し、「虚空尽き衆生尽き涅槃尽きなば、我が願いも尽きん」という永遠の誓願をたてたのである。

その趣旨とするところは、仏界の諸仏、すべての人びと、空飛ぶ鳥や地上の忠類、水中の魚やけものに至るまで、およそ宇宙法界（ほっかい）の存在する限りのありとあらゆるもんは、すべてこれ我が恩の恵みである。したがって、これらのものが一つ残らず仏と同一の悟りに入ることを願いたい、というものである。

「空海」・・・宮坂宥勝著より