わたくしは幾多の生涯にわたって生死の流れを無益に経めぐって来た、－－－家屋（かおく）の作者（つくりて）をさがしもてめて－－－。あの生涯、この生涯とくりかえすのは苦しいことである。

家屋の作者（つくりて）よ！汝の正体は見られてしまった。汝はもはや家屋を作ることはないであろう。汝の梁（はり）はすべて折れ、家の屋根は壊（こわ）れてしまった。心の形成作用を離れて、妄執（もうしゅう）を滅（ほろ）ぼし尽くした。

若い時に、財を獲（え）ることなく、清らかな行いをまもらないならば、魚のいなくなった池にいる白鷺（しらさぎ）のように、痩（や）せて滅びてしまう。

若い時に、財を獲（え）ることなく、清らかな行いをまもらないならば、壊（こわ）れた弓のようによこたわる。－－－昔のとばかり思いだしてかこちながら。

－－－－－－真理のことば・老いること・ブッダ