１，或るとき尊師は、ヴェーサーリー市の〈大きな林〉のうちの重閣講堂にとどまっておられた。

２，そのとき尊師は、六つの〈接触の領域〉に関して、諸々の修行僧たちに、法に関する講話によって説き示し、勧め、励まし、喜ばせた。またそれらの修行僧たちは、意義を理解し、注意し、心の全体を傾倒し、耳を傾けて、教えを聞いた。

３，そのとき悪魔・悪しき者は、このように思った。ーー「ここで修行僧ゴータマは、六つの〈接触の領域〉に関して、諸々の修行僧たちに、法に関する講話によって説き示し、勧め、励まし、喜ばせた。またそれらの修行僧たちは、意義を理解し、注意し、心全体を傾倒し、耳を傾けて、教えを聞いた。では、わたしは修行者ゴータマに近づいて、眩惑してやったらどうだろう。」

４，さて悪魔・悪しき者は、尊師に近づいた・近づいてから、尊師から遠からぬところで、大きな、恐ろしい、ぞっとするような声を出した。実に大地さえも開き裂けると思われるほどであった。

５，そのとき一人の修行僧が他の修行僧に向かって次のように言った。ーー「修行僧よ、修行僧よ。この大地が開き裂けると思われるほどである」と。

６，このように言われたときに、尊師はその修行僧に次のように言われた。ーー「修行僧よ。これは大地が開き裂けるのではない。これは、悪魔・悪しき者が、そなたらを眩惑するためにやってきたのである。」

７，そこで尊師は、「これは悪魔・悪しき者である」と知って、悪魔・悪しき者に向かって誌を以て語りかけられた。ーーー

「色かたちと、音声と、味と、香りと、触れられるものと、ひとえに思考の対象たるものと、ーーこれは世人をおびきよせる恐ろしい餌である。　世人はそれにうっとりとしてまともに受けている。　ブッダの弟子は、これを超越して、気をつけていて、悪魔の領域を超えて、太陽のように輝く。」

８，そこで悪魔・悪しき者は、「尊師はわたしのことを知っておられるのだ。幸せな方はわたしのことを知っておられるのだ」と気づいて、打ち萎れ、憂いに沈み、その場で消え失せた。