教典には真実語がぎっしり詰め込まれている、だからそれを唱えたり、文字を書き写すことなど現実世界でおこす行動が、真理の世界と直結して、幸運がもたらされると信じられたということは、当然と考えられます。

密教において唱える真言も同様です。現実にわれわれが唱える真言の言葉は、サンスクリット語ですから、その意味はほとんど理解できません。それでよいのです。

真言は現実世界で、人間が唱える言葉でありながら、真実の言葉で、真理と堅く結びついていますから、世界を動かす力を備えているのです。

真言宗という名前は、真言を唱えるというだけでなくて、真実の言葉である真言が、真理の世界、仏の世界にほかならないという思想に基づいたものです。

有限の世界における言葉をはじめとするあらゆる人間の活動が、ことごとく無限の絶対世界と堅く結びついているということを端的に表現した名前と入って良いでしょう。